grafは、大阪を拠点に、家具製作、グラフィックやプロダクト、空間デザイン、アート、食など「社会」や「暮らし」に関わりながら多彩な創作活動を展開するクリエイティブ集団として近年注目を集めています。1998年時の創設メンバーは6名ですが、現在は約30名がスタッフとして働いています。
「個々がやりたことを実現するために立ち上げた」のがgrafの始まりというとおり、個々の特性を生かしたその活動内容は多岐にわたり、全貌を語るには多くの言葉が必要となります。
彼らを知るための一番の近道はgrafビルを訪ねてみることでしょう。大阪・中之島の川沿いに立つ白い2つの建物、ここが彼らの拠点です。1階に家具製作のための工場、3階に家具やプロダクトを販売するショールーム、4階にレストラン『ソクラテス』、5階にオフィス、そして隣接する建物の1階にギャラリー「graf media gm」があり展覧会やイベントを開催しています。その全体の様子は、ひとつの点を中心にしているというより、いくつもの点が並び、それぞれが個性的な円を描き、ゆるやかに重なりあい、影響しあっているように見えます。どの点(人)を接点にして切り取るかにより、grafを語る言葉はおのずと異なってくることでしょう。つまりは、この多面的で重層的な性格こそがgrafの特質であり、ユニークな存在として注目を集める理由のひとつのように思えます。また、この特質が彼ら自身にとっても、絶えず新鮮なアイディアやモノづくりを生みだす大きな基盤となっているようです。
本展では、来場者は、grafがこれまで創り出してきた様々なモノ(作品)を見るのではなく、個々の特性を生かしたワークショップに参加することで、grafのヒト(人)とコト(モノづくり)を体験することになります。ワークショップという方法により会場の様子は流動的で多面的なものになるでしょう。先の言葉を借りれば、日毎に点が変わるというわけです。また、ワークショップという生の現場は、grafのモノづくりの精神やプロセスを体感する貴重な機会ともなるでしょう。本展が、多くの人によって、創造的な暮らしへとつながる刺激的な出会いの場となることを期待しています。